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「……参加者同士が、勝手に殺し合いを始めた。止めるに止められなかった、だから仕方ない。とでも言うつもりですか」
坊主頭の声が震えているのが伝わる。もしかすると、そんな残酷な想定をしてしまった自分自身がどう見られているのか分からない、という事を危惧しているのか、やけにゆっくりと彼は言葉を選んだようだった。
「二度と言葉に出すなよ。出した瞬間に、企画の裏の意図として広がるだろうが。だから、我々は素人同士の、ともすればひと笑い生まれるかもしれないスリル満点のサバゲー番組を配信します、という折り込み方しかしない」
「サバゲーみたいなもんですか」
「サバゲーとは全面的に押し出さないけどね。そしたらスプレー銃でプシュンプシュンやるだけのコンテンツしか想起させられないし。あ、そうそうそれとさ」
一度言葉を切る。
「さっき事故っつったね。スケールが小さいよ。
事故どころか、まずは炎上を目指していきたい。とはいっても、いかにもな危険な内容のネタバレをしちゃって事前に止められたらどうしようもないから、いける限りギリギリっていうのを守った表現で不謹慎に世間を煽って、炎上させて盛り上げてしまおう。なっ」
「……」
明るく言ったものの、反比例するかのようにあからさまに不信の目で誰もが見つめてきている。
想定内ではあるものの、プレゼンと営業力でのし上がってきた以上、この不謹慎極まりない催しを一言二言でしっかり全員に納得させる事が出来ない状況を歯がゆく感じる。
「まあこの本質の部分とかはまたじっくり、みんなに伝えていければと思う。
ああ、ちなみに仮タイトルでカタカナの変なのを付けようと思うんだけど、単に名前のいいのが出てこなくて、アテで入れるだけかと思う。もしくはいい具合に省略形で読めるものになればバズるのに一役買ってくれて万々歳かな、ぐらい。
実際は親会社の社長に『残虐度検証ゲーム』ってダッセえ名前を付けろと言われてるんだけど、これもセンスなさすぎるから拒否りたい。まあでも、キーワード的に裏の意図が伝わりやすいからあながち悪くはないと思うけどな」
一息に話しすぎた。ふう、と息を吐く。
「さて、いきなりリアルファイトだ、殺し合いゲームだとか言っても、なんでそんなリスキーで金のかかる事をしないといけないか。そのあたりを話そうと思う」
全員を見渡す。
「人間は、とどのつまり、飢えてるんだよ。刺激に」
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