兄妹

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 次男・半次朗(41)も金がなかった。  兄と違い、半次朗は大学を卒業した後、自分で会社を設立し事業を興そうとした。しかしその会社は多額の負債を抱え、半年も経たずに倒産した。それから何度か起業したが、やはり長続きせず潰れて行った。  倒産の原因は社長である半次朗のどんぶり勘定な経営にあるのだが、半次朗は自分に経営者としての才能がないという事実から積極的に目をそらし、ただ運が悪かったのだと思い込んでいた。  さらに半次朗は過去二回結婚し、そのどちらも彼自身の浮気によって離婚している。当然、元妻達にはそれなりの慰謝料を払っていた。子供はいなかったので、養育費の支払いがないのは半次朗にとっては幸いと言えた。  過去の倒産による負債と離婚の慰謝料によって、半次朗の懐は火の車だった。今経営している会社も、そろそろ行き詰まりかけている。それでも、資金さえあれば何とかなると半次朗は考えていた。  ニートの新一郎がまともな当主として務まるとは思えない。こいつはお飾りとして、俺が実質的な当主として実権を握ってやる。そうしたら、俺の会社も安泰だ。
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