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二つ前の生で最愛の人を見つけたディブィは、一年以上かけて口説き落としたはずなのに『幸せに暮らしましたとさ。めでたしめでたし』とはならなかった。
魔王の森に迷い込みディブィに見初められたその「人」は、人であった故に迷いもあったろうに、ほどなくしてディブィと寄り添うようになった。
折しも魔王討伐の時期と重なったのも不運だったのかもしれない。いや、その時期だからこそ、なのか。
裏切り者、スパイめ、と罵られながら魔族よりも先に無惨に殺されたその「人」はディブィが駆けつけた時には顔を潰され骨を折られ、陵辱の跡すらあった。
そのまま理性を失ったディブィはそこにいた人々を嬲り、殺し、喰った。
魔族が怒りや憎しみで溺れると、魔王に匹敵する程ではないが魔力が増大し凶暴なモノとなり人にとっては魔王よりも強大な敵となりうる。
他の魔族に阻まれていた進路を切り開き現れた勇者に聖剣を以て消滅させられたディブィだったが、憎しみは消えなかったのだろう。魔王と同様、憎しみも恨みも一心に引き受け新たなる魔王として誕生した。これが一つ前の生である。
「必ず人を殲滅させる」という意思のみの醜い生き物となったディブィは、人ではなく亜人を誑かし騙し傀儡とし、強大な人の国を亡ぼす策略を練った。
元々そういう知恵の働く魔族であったからタチが悪く、二年の間に小さいながらも国を創った。魔族のための、人を殲滅させるためだけの。
事の重大さに魔王ガルデリカが重い腰を上げ、剣を持たない渡り人に手を貸してディブィを抹消した。魂の存在すら認めなかった。
泣きながらディブィを抹消した魔王ガルデリカは暫く引きこもっていたが、長い間魔王の誕生がなかった人が、人の勢力拡大のために降臨させた勇者によって倒された。所謂『行きがけの駄賃』である。
さらに復活した魔王が、今目の前にいるガルデリカなのだとレヴィが眉を下げ今にも泣くんじゃないかと思うほど声を震わせた。
ディブィは魂すら消されたから、また一から創ったのだと魔王は深いため息と共に吐き出す。
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