魔王だってたまには泣く

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 中庭のパムの木は一種の森で、数えた事はないけど十数本程度しかないと思う。  パムの実が、魔族にとってどれほど重要な物かここ数ヶ月で理解したと思う。思うけど。  納得はできねぇよなぁ。 「生まれたばかりのディブィは初めて会ったロティを『運命』だと言っていたよ。ねぇシルベール、お前の前世も私に仕えていたと言ったらお前はこっち側に来てくれるだろうか」  だって覚えてねぇもんよ。前世なんて。 「その気になったらパムの実を持っておいで。お前は私のお気に入りなんだからパムの実と私の血とそれから私の一部を使って一から作り直してあげる」  そんなん怖ぇよ、ガル。俺はただ生きたいだけなんだ。こんな理不尽な世の中で、俺は人に殺されるのも魔物に喰われるのも嫌なだけなんだ。  ただ人として生きる事が難しいこんな世の中で、俺だけは殺さず殺されず平穏に暮らしたいだけなんだよ。  魔王の従者とか望んでなかった。  だから。  悪いけど、コレを持ってあんたの所に行くことは無い。  ・・・・・・・・・無いんだけど、なんでかなぁ。魔法、使えちゃったりするんだよな、俺。  困ったなぁ。  パムの実を食べてしまったあの大事件の後、まさかねぇと半分期待しながらでも半分以上できたら困るよなと思いながらやってみた水の魔法。以外にすんなりできてしまって、しかも割と細かい微調整なんかも簡単にこなしてしまった自分に驚いて、何も無かったことにしたのに。
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