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「なんの前触れだろうねぇ」
不意に掛けられた声は魔王様の情報屋のもので、彼もまたディブィと同じように俺の村から連れてきた子を『運命』だと言う。
今魔王の腹心に付いている従者は全員前の生でそれぞれの相手を心から愛してくれた人で、それがたまたま同じ時同じ場所で生まれて?そんな偶然あるんだろうか。
「ま、神のみぞ知るってやつなんだろうけどねぇ」
魔族のくせに『神』とか言っちゃうし。それとも魔族の神様とかいるのか?
「シルベールが思ったようにしていいんじゃない?どうせまだ手のかかる子どもみたいでしょ、あの方は」
これぞ見本というような流し目を向けられて、どうしようかな、とやっぱり悩む。
人生の中で予定通りに行くことなんてそうある訳じゃない。でもだからといって、今俺の身におきている事はイレギュラーなんて言葉では片付かないものだと思うのだ。
それでも目の端に映る『俺の』従者が慌てて走ってきて「大変です、魔王様が・・・」と言えばガルの傍に駆け寄るし、寝室のドアを開けた時だって、ため息をついていても叫ぶのだ。
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