第二章 『盗賊』対『盗賊』

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 その後、菊之助と十三郎が『どっちが先にお嬢を捕まえられるか』を競うようにして襲撃し始めたのだが、これがなかなか上手くいかない。  斬りかかっても躱される。  縄でとらえようとしても捕まらない。  俺が加わっても全くダメージなし。 「くそっ、いい加減大人しくなりやがれ!!」  菊之助の振りかぶった太刀筋を、お嬢は器用に上体を逸らしてよける。足場の不安定な屋根の上で、足を踏み外さないようにして戦うのは至難の業だ。  まるで蝶が舞うように、踊るようにしてお嬢が俺たちを躱すので、時間ばかりが経ってしまう。 「ねえ、他のみんなは今頃大丈夫なのかな……!?」  十三郎が不安を見せる。 「わかんねえよ、少なくとも今は行けるような状況じゃねえ!」 「僕たちだけでも早くかたをつけないと……」 「別の奴の心配をする余裕なんてあるのかい?」  息も乱さず、余裕を崩さないお嬢の様子に、その場の全員が焦っていた。 ――――そのとき、俺は失態をおかしてしまう。  何かに躓いて身体がぐらつき、屋根の上でよろけた。 「わっ!?」  とにかく何かに掴まらないとやばい、と思って手を伸ばし、掴んだのはあろうことか、敵のお嬢の着物の裾だった。 「五郎!?」  十三郎が俺の身体を引き戻そうとする。そのとき気づいたのだが、俺が躓いたのは十三郎が持っていた投げ縄の端だったのだ。 「おい待て、お前ら――――」  尻餅をつくように落下していく俺、に掴まれたお嬢、とそれを止めようとする十三郎、とそれを追う菊之助、  全員が一つの塊みたいになって、気付けば屋根の上からみんな足を滑らせていた。  地上に向かって、まっさかさまに落ちていく。 「わあああ!?!?」  どん、ぐしゃ、っと潰れて、人の圧がのしかかってくる。 「う……重い……」  なんとか這い上がろうとしてもそこはもう地面の上で、俺の手は土を掴むばかり。 「――――何だ?」  しかも、落下した場所には先客がいた。  見上げると、そこには誰かの脚。  と、どこかで見覚えのあるような、鉈。 「一体どうしたんだ、皆大丈夫か……!?」 「おいおいお嬢、こいつは派手にやってくれたなあ」  そこで刃を交えていたのは、三人吉三の一人・和尚吉三と、令和座の五人衆の一人・南郷力丸だった。
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