第二章 『盗賊』対『盗賊』

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「……は?」  ぽかんとする寛和。 「もともとこの同盟は、お前がお嬢を引き入れてのことだったな。俺は初めから誘いには乗らぬ気だった……だが、狂ってしまったお嬢を止められず、俺自身もお前に使われる身となった」  だがな、と和尚は続ける。 「そもそも、俺は同意できんのだ。こんな戦いに身を置くなど。寛和、おぬしのしていることは断固として間違っている。俺はこれ以上ついて行くことはできん。お嬢共々、ここから抜けさせてもらう」  寛和の疑いの眼差しが、和尚を射抜く。 「誰かに、そうしろと言われたの?」 「否、これは俺の意志だ」  更に尋ねられる。 「ここを抜けて、行く当てでもあるの」 「……」  しばらくの沈黙のあと、和尚は答えた。 「先のことはわからん。だが、解放されたあとの俺たちは、おぬしを倒すために戦うのであろうな」  それを聞いた寛和は、口元を歪めた。 「はっ、くだらないな!!」  突如として片手を宙に上げた寛和は、そこにぐわりと『鎖』を出現させた。  現れた鎖は寛和の掌から突き出ていて、お嬢や和尚の身体と繋がっている。  一本の鎖がうねると共に、お嬢の身体が浮き上がった。和尚に担がれていたところから離れていき、鎖はお嬢の胎と、寛和の手を繋いでいる。 「何っ……」  その鎖を自分の元へ手繰り寄せる寛和。気を失ったままのお嬢の身体は、空を漂い彼の元へ引き寄せられ、寛和はそれを受け止めると大事そうに抱きかかえた。 「俺はお前たちを鎖で繋ぎとめてある。例えお前がどんなことを言ったって、それを切ることはできない」  寛和が獰猛に笑った。 「だって、ここでの『頭領』は俺だからね!!」  寛和がもう一方の手を和尚に向ける。そこからも鎖が出ていて、それは和尚の背の部分と繋がっていた。 「お前たちは逃げられない。俺のもとへ入った限り、金輪際な!!」  鎖を伝って、黒い術式のようなものが和尚に渡り、彼は苦痛に悶える。 「ぐ……う……っ!!」  しかし、片手になおも持っていた鉈を握りしめると、和尚は口を開いた。 「そのように運命づけられたとしても……俺はそれに抗う……自分のことは自分でせよと、喝を入れてくれた仲間がいたのでな……!!」 「仲間……?」 「そうよ。もう既におぬしは同盟の相手ではない、俺たちが共にあるべきは、」  そう言って、振り返ろうとしたが、和尚は苦しそうに笑った。 「……いや、おぬしの前でそれを語るというのも、酷な話だな」  和尚はカッと目を見開くと、呪縛を振り払うようにして鉈を振るいあげた。 「っぐうう……は……あああ……」  そして、鎖めがけて一気に振り下ろす。 「るああああああああっ!!!!!!」  ガシャアアアアンという大きな音を立てて、鎖は断ち切られ、バラバラに砕け散った。  和尚の身体から、鎖は跡形もなく消え去った。 「な……んだと……」  唖然としてそれを眺める寛和。  和尚は肩の荷が下りたような、微かにすがすがしいような表情を見せた。 「さらばだ、寛和。また別の道で会おうぞ」  その言葉を最後に、ぐらり、と身体が傾き、彼は意識を失った。
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