第二章 『盗賊』対『盗賊』

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第二章 『盗賊』対『盗賊』

 時は来た。  巨大な満月と、そこに立ち塞がる三つの影がある。  月光を受け、寺院の屋根の上から俺たちを見降ろしている。  一人は鬼、残りの二人は鬼に身体を奪われた者だ。  令和座総員で、正面から寺院に乗り込もうとした俺たちを、奴らは待ち構えていた。 「おっと、こりゃあ見事な顔ぶれだ。そんな大勢でぞろぞろと、一体何が始まるんだい?」  寺院の屋根から声が降る。  蛇のように甘ったるい、お嬢吉三の声。  彼は悠然と、親方や俺たちを見降ろしている。  対するは、俺たちの頭領、眼帯の男。    見上げる親方はにっこりしながら答えた。 「このあたりに鬼が出るっていうんでね、役者揃えて退治に来たんだよ」 「ヘェ、そいつはご苦労。ただ、ここらの鬼はずいぶんと、手荒な真似をするからねえ……」    彼は銃口を俺たちへ、真っ直ぐに突きつけた。 「腹ん中裂かれて『札』喰われる前に、帰ったほうがいいぜえ、役者さん方よお……!!」  同時に、連続した銃声が爆音のように轟く。  周辺の木々からギャアギャアと烏が飛び立っていった。 ――――開戦の合図だ。
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