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食器棚をあさっていると、イチゴ柄のパスタ皿が出てきた。レモンクリームパスタをこれに入れよう。サラダはベネチアングラス仕立ての深皿に、クルミとグレープフルーツにいくつかの葉物野菜、プチトマトに赤玉ねぎのスライス、鶏の胸肉に焼き色をつけてそぎ落としたものも入れようと決めた。最近は料理にフルーツを取り入れる癖がついていた。サラダだけでも晩御飯のメインになりそうだわと一人ごちた。土曜日の夜だ、これくらい贅沢しても誰にも文句は言われないし、良心も咎めない。
深皿を棚の奥から出そうとすると、彩子の手が何かに当たった。彩子は反射的にそれを棚の外に出していた。
(やだ、これまだ捨ててなかったんだわ。)
黄色とピンクのペアのマグカップだった。彩子は二つとも手にとると、しばらくじっと見つめると、ブルーのゴミ袋にそっとおさめた。かつて翔太と同棲を始めたばかりの頃、日本のどこにでもあるホームセンターで買ったものだった。「俺が黄色で彩がピンクな」と言った翔太の声が遠くの記憶の谷から蘇ってきた。
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