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こね終わった肉をハンバーグの形に成型すると、パスタソースを作り始めた。オリーブオイルでニンニクを炒めて香りを出しベーコンとアスパラガスも軽く火に通した後、生クリームを注ぐ。レモン汁と塩コショウで味を整える。酸味と塩気をうまく調和させるのがこのソースの鍵だ。ソースの味のバランスを取ることで自分の中のバランスを調整しているような気がする。それほど時間がかかるレシピではない。フライパンに蓋をして、保温するとサラダの準備に取り掛かった。
クルミを砕き、オーブンでローストする間に、ロメインレタスやグリーンリーフを洗い、はちみつと塩コショウで下味をつけた鶏肉を焼き色を付けながら炒めていく。グレープフルーツの薄皮もとって、炒め終わった鶏肉と一緒に冷蔵庫で冷やす。ドレッシングはシェリービネガーベースのオリジナルだ。
彩子は三つの料理をテーブルに並べると、パスタから手をつけた。美味しい。濃厚なクリームと塩加減、レモンの爽やかさが絶妙なハーモニーを奏でている。サラダはカリカリしたクルミと口の中で弾けるグレープフルーツがアクセントになっているし、レタスはシャキシャキ。鶏肉がずっしりと安定感とボリュームを与えている。皿の中で、野菜とナッツと鶏肉がワルツを踊っているかのようだ。
ハンバーグにナイフを入れると、彩子は一つ口に運んだ。ゆっくりと咀嚼すると、だんだんと遠ざかっていく翔太の顔が浮かんだ。ハンバーグをこま切れにして、私の口まで運んでくれた翔太の甘い微笑み。先ほど、瞳に浮かんだ涙が頬まで伝い落ちていた。彩子はハンバーグの乗った白い平皿を持って立ち上がると、オレンジのゴミ袋に放り込んだ。ハンバーグはとてもバランスの悪い味がした。
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