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これ、と言って渡される遺書には、「聖那へ」と小さく書いてある。父らしい。
「母さんのもあるけど、貴方のは渡しておくわ。…そうそう、葬儀のことなんだけどね…」
母は忙しく、葬儀屋通夜の事を決めなければいけないため、少しぼんやり、少し神経質になっていた。
結局、夕飯を食べながら途中から葬儀の日取りについての相談になってしまったのだった。
夕飯を食べ終え、コーヒーを飲み終わってから俺はシャワーを浴びた。
部屋に行ってみると、大学生になる前から全く変わっていない状況がそこにはあった。
懐かしいベッド。机。
忌まわしい高校生活が記録されたアルバム…
しかし、大学生になってもそんなに状況が変わった訳ではなかった。
女にもてないのは当たり前だし、サークルに入ってもひと月で飽きる、ほら、高校生活とどこが違うんだ。夢のキャンパスライフなんて、どこにも無い。結局毎日講義とアパート、バイトの繰り返しなだけだった。
「大学、通えんのかな…」
父が死んでも、変わらない生活ができるのか分からない。母に聞いておく必要があった。
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