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アンドロイド・蕾参上!
大学二年の夏、親父が死んだ。
突然の事で、地方の大学に通っていた俺は悲しむ間もなく都内に戻ってきた。実家に行くと、母親が出迎えてくれた。母は、親父が死んだなんて嘘なんじゃないかと思うくらい普通で、お帰りなさい、と言った。
お夕飯、用意してるから、そう言うと台所に消えていく。もしかして、やっぱり嘘で、奥の書斎から父が出てくるんじゃないかと思った。
なんて言っていいか分からず、俺はダイニングテーブルの椅子に座る。
夕焼けの真オレンジが、リビングのソファーを照らす。
そこに父が座っているかのように思えた。
「…聖那、帰ってきてくれてありがとう…未だに信じられないのよ」
「…うん」
俺たち親子はそう言いながら、味気のないコロッケを食べる。ソースの味さえも、何だか透明に感じる。
父がいない。
自分にとっては、信じられないような事だった。
「…書斎から、遺書が二通出てきたの」
「えっ」
思わずコロッケを出しそうになる。
蛼の鳴く音が、庭から聞こえてきた。
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