俺の彼女はアンドロイド!

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「じゃあ、待ってる…から…」 恥ずかしさも最高潮になり、俺は店の端っこで他の服を見ていた。 一着じゃ足りないよな? うーん… 勇気を持って俺は店員に声をかけた。 「あの、一週間分、着こなせるように選んでください、彼女の服」 「えー!ありがとうございます!太っ腹のカレシさんですね」 店員は目をキラキラとさせて、俺にそう言った。 はァ… これでいいだろう。 「聖那様…」 そこには、の終わった蕾がいた。 清楚な蕾の顔に、アイボリーのブラウスは合っていた。ブルーのスカートも、愛らしい蕾の顔を控えめに演出していて、いい。ピンクよりずっと似合ってる。そんな気がした。 「似合ってるよ、蕾」 「ありがとうございます…」 蕾の顔は、嬉しそうに綻ぶ。 ああ。 良かった。 蕾が喜んでいる。 単純なことなのに、凄く楽しいし、俺も嬉しくなるなんて。 こんな感覚、ずっと忘れていた。 そう、…遠い昔、家族で遊園地に行った時、母さんが笑っているのを見た時のような気持ちになっている俺がいた。 もう、ずっと忘れてた。こんな感覚… 「聖那様?」 蕾に顔を覗かれて、俺は狼狽える。 店員に、お願いします、と声をかけると、様々なコーディネートの服がわんさと出てきて、蕾も何だか大変そうだ。 …ま、そんなこんなで洋服選びも終わって、多量の荷物…これ、電車で運ぶのかよ… 「ありがとうございます、聖那様」 「いや、俺の金じゃないし…蕾の当然の権利だよ、これは」 「権利…」 「あー、権利ってのはさ、それを使って当然、とか、権限があるって事」 「蕾の権限は、全て聖那様にあります」 長い睫毛が、瞬きをするのを見つめる。 「そう、か…いや、でも俺はさ…」 何とも言い難い気持ちが、俺の中で膨れ上がっていた。 「俺の蕾…だけじゃなくて、なんていうか」 「?」 「蕾のための蕾でもあって欲しいなー、って」 「…」 「ごめん、嫌だった?」 蕾は首を振った。 「私のための蕾…」 「そうそう。ごめんね、ヘタレたご主人様でさ」 アンドロイドにしては、頼りないご主人様だよな…幻滅しないで欲しいけど…幻滅って言葉知ってるかな? 「蕾に命令はしたくないよ…家族、みたいに思いたいんだ、蕾のこと」 「家族…蕾が…聖那様の…」 「うん。徐々にさ…家族になろう、俺たち」 ピピッ…ピピッ… 「家族…アンドロイドでもなれるでしょうか」 当然だろ、と俺は言った。 蕾は少し、困ったような顔をしていたけど、俺は知らないふりをして、渋谷駅へと入っていった。 いつの間にか、空はオレンジの夕焼けになっていた。
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