お花売りのカノコ

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お花売りのカノコ

 強い風が吹くと瞬時に、フクロウの小さなマスコットを付けた帽子を押さえる。風が通り過ぎるのを待って、押さえていた手を放すなりカノコは言った。 「花の声が聞こえる」 「では、今回はここで?」  私はひいていたワゴンを止める。ワゴンにはたくさんの種類の花が載っていて、これをそのまま止めれば、そこはカノコの店へと変わる。 「もう少し行ってみましょう」 「姫さん、地図を見てもこの先には特に何もないですよ」 「それでも、いくの」  カノコはそう言って歩き始めた。  私はカノコに従うしかない。縛られているとかそういうことではなく、それは自分で決めたことだ。カノコの意思のままに私は旅をする、と。  ふわりと吹く風がカノコのスカートを膨らませる。これだけ頻繁に風が吹くと花が散ってしまわないか心配になって、ふとひいているワゴンの方を振り向くが、心なしか心地よさそうに揺れている程度だった。
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