0人が本棚に入れています
本棚に追加
お花売りのカノコ
強い風が吹くと瞬時に、フクロウの小さなマスコットを付けた帽子を押さえる。風が通り過ぎるのを待って、押さえていた手を放すなりカノコは言った。
「花の声が聞こえる」
「では、今回はここで?」
私はひいていたワゴンを止める。ワゴンにはたくさんの種類の花が載っていて、これをそのまま止めれば、そこはカノコの店へと変わる。
「もう少し行ってみましょう」
「姫さん、地図を見てもこの先には特に何もないですよ」
「それでも、いくの」
カノコはそう言って歩き始めた。
私はカノコに従うしかない。縛られているとかそういうことではなく、それは自分で決めたことだ。カノコの意思のままに私は旅をする、と。
ふわりと吹く風がカノコのスカートを膨らませる。これだけ頻繁に風が吹くと花が散ってしまわないか心配になって、ふとひいているワゴンの方を振り向くが、心なしか心地よさそうに揺れている程度だった。
最初のコメントを投稿しよう!