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耳をつんざくようなけたたましいアラームの音が鳴り響く。
腕を頭上に精一杯伸ばして携帯を掴み、ボタンを押すとアラームの音が止まった。
そのまま五分ほど経っただろうか、再びアラームの音が鳴るとすぐにボタンを押して上半身を起こす。
寝起きはとても体が重い。働かない頭を起こすため洗面所で冷水を顔にぶつける。
リビングに向かうと台所から油の跳ねる音が聞こえてきた。
リビングにあるテーブルまで近づくと朱音が僕に気付き声を上げる。
「おはよう。もうそろそろしたら朝食できるから待ってて」
その言葉を聞くと僕はテーブルにある椅子に座り、テレビリモコンのスイッチを押す。テレビには芸能人カップルが結婚したというニュースが流れていた。ニュースを眺めていると彼女が料理を運んでくる。テーブルにはご飯と味噌汁、目玉焼きが出された。
朱音と出会ったのは、大学在学中のことだった。
実家からの仕送りを頼りに生活していたが、送られてくる金額では遊ぶ金がなかったため、金を稼ぐ必要性がでてくる。
そんな、遊ぶ金欲しさに始めたコンビニのバイトに彼女はいた。初めてあったときはタイプではないと思っていたが、何度か会話を重ねるうちにだんだん、彼女のことが気になるようになっていた。
バイトの仕事が終わり帰ろうとすると、丁度同じタイミングで朱音も仕事を終えていた。
そのまま二人で店を出て車を止めてある、駐車場まで歩く。
なかなか告白するタイミングが掴めなかった僕は、意を決して言葉を発する。
「付き合ってくれませんか」
突然の言葉に驚いたのか、顔が一瞬固まった。動揺を隠しきれず頬を赤らめる。
「私でよければ」
少し間を置いて彼女が口を開く。
その言葉を聞けたときは心が躍るほど嬉しかった。
朱音は、そんな僕の喜ぶ顔を見て笑みを浮かべていた。
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