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寒さも増してきた11月のある日、この日は部活が休みで僕は帰宅せずに高校の制服のまま市役所に足を運んだ。
市役所の受付の方に、お金を寄付したいということを伝えると、社会福祉協議会に相談するのが良いのではというアドバイスをもらった。
さっそく受付の方に教えていただいた社会福祉協議会に足を運び受付の方に相談すると、総務課の担当の方が対応してくれた。
総務課の担当の方は若い女性の方で、僕は個室の会議室に案内された。
「『清華(せいけ)』と申します。」
清華さんが名刺を渡してくれたので、
「和久です。
よろしくお願いします。」
と僕は名刺を受け取りながら挨拶した。
「どうぞおかけください。
どのようなご用件でしょうか?」
優しそうな清華さんは、笑顔で僕に語りかけてくれた。
「実はハロウィンジャンボ宝くじで5億円当せんしまして、このお金を寄付したいのです。」
僕が発言すると金額の大きさに驚いたようで、
「ご家族の方には話されたのですか?」
と僕のことを心配してくれて質問してきた。
「5億円の使い道は、僕が決めていいことになっています。」
僕が発言すると清華さんが、
「それで寄付をすることは、ご家族に話されていますか?」
とさらに質問してきた。
「いいえ、まだです。」
僕が正直に答えると清華さんは、
「なぜご寄付いただけるのですか?
当せんしたお金は、ご家族のために使わなくてよろしいのですか?」
と心配そうな表情で言葉をかけてくれた。
僕は宝くじに当せんしてからお金の使い道について家族の間でわだかまりが起きていて、それまで仲の良かった家族関係がぎくしゃくしているということを清華さんに正直に伝えた。
「このお金は、無かったことにしたほうが良いのです。
そうすれば、僕の家族は元通り仲の良い家族になれると思うのです。」
僕が訴えると清華さんは理解してくれたようだった。
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