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「腕……大丈夫なのか?」
未だ獣が癒そうとばかりに舐めている少女の肩を覗き込む。
肉がえぐれたそこはもしかしたらこのさき彼女の腕は動かなくなるかもしれないほどに、酷く深い傷が残っている。
「大丈夫。この子たちの心の傷に比べたら平気。あなたは?」
「俺? 怪我なんかしてねぇよ?」
「……あなたは、武族でしょう? こんな所で私と話してるのが見つかったら
大変でしょう? もう、戻った方が良いんじゃないですか?」
射抜くように見つめる少女から目が離せなくなっている。
見つかれば危険なのは、お互い様だ。
なのに彼女はルカや獣の心配ばかりしている。
「……俺のことは気にすんなよ。ってかその傷、見てるこっちの方が痛い」
「どこに行くんですか?」
「薬草! 何もしないよかマシだろ。ちょっと待ってな、すぐ見つけてくるから」
「あ、あのっ……行っちゃった。ふふっ、大丈夫だよ。あの人……優しいね」
闇夜に浮かぶ満月と、獣のつぶらな瞳が少女を見ていた。
その暖かな毛並みを撫でながら少女はルカを待った。
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