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すでに先ほどの情事のせいで力の抜けきっていたジスの身体は思うように動かず、ろくな抵抗もできていない。
ルカとはもう何度も身体を重ねてきた。互いに遠慮のない関係ではある。
けれど、情事の間も――めちゃくちゃに唇を貪っている今も、ルカは眉間に深い皺を刻んだままだ。
まるでジスのことなど見えていない。
「ッ、いい加減に、して……っ!」
ただの憂さ晴らし――八つ当たりで抱かれたことくらい気付いていた。
身体だけの関係といえど、その事実はジスを傷付けるに充分だった。
「ジス、俺……」
ジスの悲痛な叫びに動きを止めたルカは、ただ茫然と泣き顔を見せぬようシーツに顔を押し付ける彼女を見つめる。
声を押し殺す彼女に小さく謝罪をしながら頭を撫で、ルカは散らかった衣服を拾い上げて背を向ける。
「俺、どうしたらいいのかわかんなくなった。何のために、誰のために戦うのか……考えても考えても出ない答えに苛ついて……悪かった」
「ルカ? 何言って……」
ジスはあられもない姿のままルカに掴みかかり、自身を見るようにと促した。濡れて赤くなった瞳は、ルカの迷い続けるそれを見つめる。
武族の者が憧れてやまない存在。
それが、戦いに迷いを持ってどうするというんだ。
「遠い昔から神族はあたしたちの敵。あたしたちは奪われたものを取り戻すために戦うんじゃない。それ以外に理由がいる!?」
「……奪われた、もの」
「そうよ。祖先の恨みを晴らすために戦うの。ルカ……あなたあたし以外にそんな話してないわよね? 族長の息子がそんなばかなこと……」
「ジス、乳隠せ。来るぞ」
合わせていた視線が弾かれ、ジスはシーツで自身の身体を隠して入口を見つめる。
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