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「信じられないあいつ……」
意気消沈するジスを尻目に、ナギルは深い溜め息を吐いた。
「いいから、服を着ろ。いつ族長が入ってくるかわからないぞ。それにさっきから胸が見えている」
「あ、ごめんごめん」
「……」
恥じらいのかけらもないジスに呆れ顔を送ってやり、衣擦れの音を背後に聞きながらナギルは親友である男の変貌に頭を抱えつつ天幕を後にした。
彼に何があったのか。
何が、彼を変えたのか。
「目を、覚まさせてやらないとね……」
ひとり天幕に残されたジスの言葉は、誰に届く訳でもなく、ただひっそりと呟かれた。
彼らの運命は今、大きく揺れ動こうとしていた。
武族と神族、この二つの一族が辿る道など――今は誰も知らない。
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