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「どう……なってるの?」
おずおずと辺りを見回しながらそんなことを呟いた時、ふと私の視線が吸い寄せられるように止まった。
それはトラックが向かおうとしていた先、私の左手側に伸びる車道の途中に見えたもの。
そこに、さっきまでいなかったはずの青年がいたからだ。
「……」
それは、とても不思議な光景だった。
青空を背に、雲のように真っ白なシャツを着たその青年は、迷うことなく私の方へとゆっくりと近づいてくる。
すべての時間が止まった世界の中で、その姿はまるでお伽話のように現実味がなく、どこか神々しくさえ感じてしまう。
一歩、また一歩と近づいてくる彼の姿を、私は息をするのも忘れて見つめていた。
そしてその澄みきった真っ直ぐな眼差しを見た時、ふいに不思議な感覚が胸の中を駆け抜けた。
懐かしいような、抱きしめたくなるような、そんな温もりを纏った感覚。
この感じ……どこかで。
私の心の中で、ずっとずっと奥の方で、何かが熱を持ったような気がした。
まるで、忘れていたはずの記憶をもう一度思い出そうとするかのように。
自分の真正面まで近づいてきた彼は、そのまま足を止めると、そっと私の顔を見下ろした。
青い瞳が印象的で、何となく歳は自分と近そうだと思った。いや、そんなことよりも……
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