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胎内記憶
「ね、花蓮。『胎内記憶』って知ってる?」
昼休みで賑わう教室、私と同じように目の前でお弁当箱を広げていた有紗が、柄にもなく難しい言葉を聞いてきた。
「何それ? 生物のテスト問題?」
「違うよ。それが昨日テレビでやってたんだけどさ、人間って4歳ぐらいまではお母さんのお腹にいたときの記憶とか、前世の自分の記憶とか覚えてるんだって! なんかそれって凄くない?」
ぱっちりとした瞳をさらに大きくさせて興奮気味に話す有紗に、私は「ふーん」と素っ気ない声を漏らす。
彼女とは幼稚園の頃からの付き合いになるが、あまりテレビを見ない私と違って、昔から『超』が付くほどのテレビっ子。そのせいなのかおかげなのか、テレビを見ない私でも友人たちの話題についていけるのは、有紗からの情報提供によるところが大きい。
「しかもその番組で胎内記憶を持つ男の子も紹介されてたんだけど、その子がいうには『輪廻転生を繰り返す魂は前世と同じ運命を辿る』らしいんだって。ってことはさ、もし胎内記憶を思い出すことができたら自分のこれからの運命がわかるってことだよね?」
それってビックリじゃない⁉︎ とさらにヒートアップする有紗に、私はお箸を持つ手を止めて思わず苦笑いを浮かべる。
素直に何でも信じるところが彼女の良いところではあるのだけれど、将来変な壺を買わされたり、怪しい宗教に加入させられたりしないかとかたまに不安になってしまう。
っというより、『輪廻転生』とか『魂』とかそんな小難しい言葉を知っていたその男の子のほうがビックリだ。
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