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「でもその記憶を覚えてるのって4歳までなんでしょ? 17歳の有紗だともう無理じゃん」
「ひどい! 何よ自分はまだ1つ下だからって余裕ぶっこいちゃって。そういう花蓮も明日で私と同い歳になるんだからね」
「いや、余裕も何もその話しだと16歳もおんなじじゃん……」
プンスカとわざとらしく頬を膨らませる有紗に向かって、私は呆れた口調で答える。けれど気まぐれな彼女は、すぐにその表情も話題もけろりと変える。
「それで私思ったんだけどさ。昔花蓮が合唱コンクールの時に叫んだことって、もしかしたらその記憶のことなんじゃない?」
「え? 合唱コンクール?」
唐突に飛び出してきた話しに、私は思わず眉根を寄せた。有紗はいつもコロコロと話題を変える上、言葉足らずのことも多いが今回は特に……
と、そんなことを思っていた時、ふと頭の中に一つの映像が浮かび上がり、私は思わず「あッ」と声を漏らした。そしてすぐに顔を赤くする。
「ちょっと有紗、まさかとは思うけどその話しって……」
私は頬を熱くしながら、目の前でパクパクとお弁当を食べている有紗をじーっと睨みつける。するとちょうどおかずを飲み込んだ彼女が、「うん」と頷いた。
「そう、あの話しだよ」
そう言って悪気なくニコリと笑う友人に、私は大きくため息を吐き出す。
有紗が言っているのは、私たちが幼稚園の頃の話しだ。
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