胎内記憶

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「えーそんなことないよ。むしろ幼稚園の頃の方がみんな素直だし、今よりも信憑性が高いと思うんだけどなー。ねえ花蓮、ほんとに何も心当たりがないの?」 「あるわけないじゃん。それに私は自分の運命なんて知りたくないし、そういう話しも信じません。だから……」  と、そこまで話した時だった。  私はふと誰かの視線を感じて言葉を止めると、教室の窓側の方を見た。 「どしたの花蓮?」  不思議そうに尋ねてくる有紗の声を片耳で聞きながら、結局クラスの誰とも目が合わなかった私は小さく首を振る。 「ううん、何でもない」    そう呟いて再びお箸を握りしめると、「えー嘘だぁ」と目の前からは不服そうな声。さっきの話題の延長で、誰かに見られていた気がするなんて言えば、有紗のスイッチが余計に入ってしまうだろう。  そう思った私は彼女の言葉を聞かなかったことにして、おかずと一緒に喉の奥へと押し込んだ。    でも、あれは見られていたというより……    友人の言葉を飲み込めても、さっき感じた違和感は消えることがなく、私はチラッともう一度窓の方を見た。  けれどさっきと同じで誰かと目が合うことはなく、視界に入ってきたのは、遥か向こうの雲の隙間から天使の梯子(はしご)が顔を覗かせていることだけだった。  珍しいなあ、なんてことを思っていたら、再び有紗の声が鼓膜を揺する。 「もう、花蓮が教えてくれないなら今日のサプライズパーティーに連れて行ってあげないよ」 「え? サプライズパーティーって何?」  またも飛び出してきた聞き慣れない言葉に私がきょとんとした表情を浮かべて聞き返すと、「しまった!」といわんばかりに有紗の瞳が大きく揺れる。それを見て私は思わずぷっと吹き出してしまった。    どうやら今日の放課後の運命はすでに決まっていたようだ。
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