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約束
奇妙な違和感が拭えないまま、私と有紗は学校を出ると、みなが集まっているという駅前にあるカラオケまで向かった。その道中、有紗とはいつものように会話に花を咲かせていたけれど、私の心は落ち着かなかった。
さっきのは何だったろう……
有紗の話しを聞きながら頭の片隅でそんなことを思った私は、無意識に左手で自分の右手首をきゅっと握りしめる。
階段から落ちそうになったのを間一髪のところで魔逃れることができたとはいえ、その理由があまりにも不可思議だ。それに、時折感じてしまう誰かの視線のことも。
まさか17歳の誕生日を迎える前に幽霊にでも取り憑かれたとか? なんて考えが一瞬脳裏をよぎるも、それは違うだろうとすぐに否定することができた。
なぜなら、どうしてかはわからないけれど、そこに恐怖を感じなかったからだ。
「……れん、ねえ花蓮ってば!」
自分の名前が呼ばれていることに気づき、私はハッと我に戻った。そして隣を見ると、ぷくぅと頬を膨らませている有紗の姿。
「もうッ、今ぜったい私の質問聞いてなかったでしょ?」
「ご、ごめんちょっと考えごとしてて……何だっけ?」
私の言葉に有紗は少し顔を伏せると呆れたようにため息をつくも、すぐにくりっとしたその瞳を向けてきた。
「だから、『17歳になったらしてみたいことは?』って話しだよ」
「えー、18歳だと色々できることは増えるけど17歳だと今と同じでしょ」
そう言うとどうやら有沙が期待する言葉とは違っていたらしく、彼女は再び「もう」と言って唇を尖らせた。
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