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「ダメだよ花蓮、そんな夢のないこと言ったら! これから17歳を迎える人たちに怒られちゃうよ」
「何その変な注意の仕方。有紗はほんと大袈裟だな」
「そんなことないよ! だってやってみたいこととかほしいものがあったほうが絶対人生楽しいでしょ」
「そんなこと急に言われてもなぁ」
私はボヤくように言葉を返すと、自分にもそんなものがあるのだろうかと考えてみる。
これまでの人生の中で、特にこれといって明確にやりたいことや夢なんて持ったことはない。有紗の言うようにあったほうがより充実するとは思うけれど、私は今のままでも結構楽しんでいる。
なんてことを思いながら視線を上げた時、まるでどこか遠くの世界まで続いていそうな青空を見て、ふと胸の中に言葉が浮かぶ。
「……約束」
不意に私がぼそりと呟いた言葉に、有紗が「え?」と小首を傾げる。
「約束をちゃんと守れるような人になる……とか?」
心にぼんやりと浮かんだことを声にすると、何故かそんな言葉になった。今まで自分でもそんなことを改めて考えたことはなかったので、ちょっと不思議だ。
「それって、やってみたいことじゃなくて心構えでしょ」
そう言ってクスクスと愉快そうに喉を鳴らす有紗は、真面目に答えた私に向かって「花蓮ってたまに天然だよね」と衝撃的な言葉を付け足してくる。
「有紗にだけは言われたくないよ」とすぐに私が答えようとした時、急に彼女が「あッ」と声を上げた。
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