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「あのー、お客さんさあー、あの娘はねえ、実は、あれなのよ、オトコなの。もうお客さんを騙すことに懲りたみたいよ。勘弁してやってくださいましね。人それぞ事情があってのことだから自由にしてやりなさいな。何処に行ったですか?あのオトコはね、ゲイバーと掛け持ちなのよ。もう、生きていくって大変なんだからさあ」
「ちょっと教えてもらえないかな、そのゲイバーは何処にあるんだね、僕も行ってみたいんだが」
「あら、そうなの、でも、止した方が良いと思いますけど。だって、お客さん、興味半分では駄目なのよ。そうよねえー、boon、boon」
「そうよ、そうなのよ、この店も無理を承知で土・日はゲイバーをやっているんですから。ご興味があるのでしたら、まずは、この店でちょっとだけでも試してみたらどうかしら?よろしかったらお相手させて頂きますけど....。そうですねえ、うなじ辺りを凝視されるのは一向に構いませんけど、触らないようにしてください。わけても、股間にだけは注意してくださいね」
「何を言っているんだ、君。誤解するんじゃない。僕とナオミとは心で交わっているんだ。肉体の交わりなんかどうでも良いんだよ。ナオミが女であれ男であれ、心と心の交わりを模倣し、なぞるだけの肉体の交わりに一体なんの希望を見出せるというだね。僕は悲しくても希望に生きていくんだ。僕は甦ったんだよ。今夜、ようやく決心がついたよ。有難うね、good bye...」
俺は限りなく涙を流した。あの客の後ろ姿に希望の在処を見たような気がした。
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