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「旦那、お困りのようで。後ろの席から失礼しますが、今の聞いてましたぜ。同情しますわ」
得体の知れない禿げ頭の爺さんが声をかけてきた。ナオミと私との関係が見透かされたのかと疑った。
「俺も、あのナオミにやられたんですわ」
「やられた?どういうことですか?」
「旦那より金額は少ないですがね、毎月3万づつの返済ということで30万を彼女に貸したんですわ、貸してから今日で丁度10ヶ月経ちましてね、今日無事に全額戻ってきましたわ。ほら、これがその3万ですわ」
爺の顔も、その3万円札の諭吉の顔も、いかにも偉そうに見えて仕方がなかった。
「それはよかったですな」
「それがですよ、彼女、客から見境なくお金を借りているようなんですわ。噂では、客からお金を借りても、一銭たりとも使ってはいないようなんですわ」
「どういうことなんですか?聞き捨てなりませんな」
「いいですか、彼女にお金を貸した客は、少なくとも月に一度はこの店に来なくてはなりません。それで、この店に来たからには、決まって高い酒を飲まされるんですわ。よくよく考えれば、彼女に貸したお金なんて、客をこの店に繋ぎとめるための縛りのようなものなんですわ。言ってみれば、彼女なりの常連客を増やす手段なんでしょうな。俺なんかは彼女の色気に唆され、平均して月に二度はこの店に来ましたわ。今日までこの店で、俺が幾らお金を使ったと思いますか?たいした額ではないですがね、70 万ですわ。いやはや、お金を貸すだけではありません、彼女に高価なプレゼントまでさせられちゃいましたよ。旦那も覚悟すべきですな」
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