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「パパ、お待たせ、さっきの件、お願いね」
「ナオミ、悪いがお金を貸すのはないことにしてくれないか」
恰好悪いが、どうしょうもなかった。
「初めからダメ元なのはわかっていたわよ。そんなに弱気になる必要はないのよ。パパ、そんなにがっかりしないで、でも、好きよ、その哀愁帯びた表情、素敵だわ。キッスして」
「他の客が見ているだろう」
「いいのよ、パパだけが全てだから」
ナオミが客から借金しまくっているとはとても思えなかった。あの虚ろな瞳、私にすがろうとしていた。ああ、思い切り抱いてやりたいと焦った。ああ、なんとかしたいと。
「あなた、どうしたのよ?わたしを抱きたいの?その手つき、どうかしていない?止めなさいよ。そんなこと、この体位では無理なのはわかっているくせに…」
ナオミ、おまえを私のものにしたい、なんとかならないものだろうか。
「50万でいいのか?100万でもいいんだよ」
「どうして?気持ちが変わったの?」
「いや、今晩は銀行から引き落とせないだけなんだ。明日になれば大丈夫だからね」
私は又もや好い加減なことを言った。
「無理しないで、他のお客から借りるから」
「そんなことを言わないでくれ。私に任せてくれないか」
「パパ、素敵だわ、ナオミ、パパのものよ。わたしを好きなようにして。今夜はホテルに泊まりたいわ。でも奥さんが待っておられるでしょう」
「じゃ、三日後にしょうか、会社の出張ということにしておこう。お金はそのとき用意しておくからね」
「近くのホテルを予約をしておくわ。さあ、今夜の最後のダンスタイムだわ。踊りましょうよ。ワルツだわ」
ナオミは私の頬にキッスをした。可愛い唇。甘く、はかないキッスを。
「ああ、もう嫌だあ、あなた、その唇はなんなのよ、わたしにキッスでもしたいの?ダメ、ダメよ、よしなさいよ、この体位では無理だと言ったでしょう。あきらめなさいよ、あなたは身体は頑丈そうに見えるけど、もともと心臓が弱わそうだから、この体位でゆっくりやるしかないのよ…」
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