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コールボタンを2回押すと、件の魔術師シモン・ロベールに繋がった。
「もしもし」
「もしもし、古田です。体育館の倉庫で斉川マコトを見つけました」
「……!! 本当に見つけてしまうとは……!! あくまでも貴方は保険のつもりだったんですが」
驚愕に息を飲むシモン。
保険だったのか、と思ったがそりゃそうだ。素人に自分の仕事を任せる訳にはいかないだろう。
「これからどうすればいいですか」
「斉川を刺激しないようにして、時間を稼いでください。彼女の保護は我々でします」
「……わかりました」
保護ではなく捕獲ではないだろうか、と訝りながらもそれは口にすることは出来ない。
「準備が出来次第そちらに向かいます。いいですね? くれぐれも刺激しないように」
そこで電話が切れた。
私はやるせなさに肩を落とし、重い足取りで体育倉庫に戻ろうとした。
しかし、そこでピタリと足が止まる。
このままでいいんじゃないか?
斉川には用事があることを伝えただけだ。
私が戻る必要は無い。
今日から、彼女は私の生徒ではないのだから。
永久とも一瞬とも思えるほどの時間が経っただろうか。
「古田先生、初めまして。シモン・ロベールです。彼女は?」
10人ほどの軍人を連れた、外国人の男が現れた。
全員が肩からアサルトライフルを掛けて、重そうなヘルメットとボディアーマーを着込んでいる。
一部の者は透明な盾を構えている。
警察のSATの装備によく似ているように私には思えた。
「彼女は……斉川は倉庫の中に居ます」
「わかりました。あとは我々にお任せ下さい」
そう言って、シモンは部下にてきぱきと指示をしていた。
「これより突入する。ビリーとハンクが先行しろ」
遠くから声が聞こえた。
視界がふらついて、ふらつく。
もう何も考えたくない。
緊張の糸が解けた私は私はその場でへたりこんでしまった。
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