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「これより突入する。ビリーとハンクが先行しろ」
「了解」
巨大な盾を持った二人がシモンの命令に従い、ターゲットに気づかれないように体育倉庫の入口に近づく。
そして、筒のようなものを投げ入れる。
体育倉庫の中を花火のような爆音と白い光が駆け巡った。閃光手榴弾(フラッシュバン)だ。
「突入!!!!」
何人もの軍人が体育倉庫になだれ込んだ。
軍靴の音を響かせて。
「やめて! 離して!」
微かに聞こえる彼女の声はそのけたたましさにかき消されてしまった。
斉川マコトは何人もの大人に組み伏せられて、左手の手首に腕輪をはめられた。
魔力の暴走を抑える腕輪を。
「捕縛しました!」
「よし、任務完了」
斉川マコトの保護は呆気なく終わった。
体育館の入口で待っていた古田教諭は、ただ呆然とその成り行きを見つめることしか出来なかった。
「古田先生、ご協力ありがとうございました。後日、お礼に伺います」
シモンが丁寧に礼を述べる。
斉川マコトはビリーと呼ばれた軍人に抱き抱えられている。
まだ、閃光手榴弾の影響が残っているらしく、その目の焦点は像を結んでおらず、三半規管は麻痺している。
だが、それは視覚と聴覚だけの話だ。
斉川の超常的な魔力が、古田の姿を捉えた。
「せ、せんせい? どうして……?」
はっきりと古田の方を見る斉川。
その悲しげな表情と今の状況のミスマッチが、古田の背中に氷を入れられたような感触を与えた。
「どうして私のこと裏切ったの?」
そんな懇願するような表情をしないでくれ。
私は
「ごめん斉川。 先生にはどうすることも出来ないんだ」
絶望を吐き出した古田に、ようやく斉川も悟る。
彼女は目を見開いて叫び出した。
「ああああああああぁぁぁ!!!!
「先生も!先生も!私の事バケモノだと思ってるんだ!みんなみたいに!!みんなみたいにぃぃぃぃ!!!!ああ、もう嫌だ!!!!嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い嫌い!!!!みんな大っ嫌い!!!!!」
見たことのない怒りに顔を染めあげられる斉川。その対象には間違いなく古田も入っていた。
古田は顔をひきつらせて、生徒だった少女を見ることしかできない。いや、少女から目を離すことができない。そういう魔術なのだから。
拘束用の腕輪すら透過する魔力。それほどの力が既に斉川マコトの体内にはある。
「眠らせろ!!」
シモンが命じると、女性の隊員が駆け寄り、彼女に処置を施した。
彼女の首元に注射器が打ち込まれたその瞬間、彼女は力なく意識を手放した。
古田には何も出来なかった。
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