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叶わなかった恋
『今度の日曜日に合ってくれない?』
突然電話があった。
その人が指定された喫茶店に入ると、既にそこにいた。
その人は高校時代の私の憧れだった同級生であり、恋の始まりの目撃者でもあった。
「早速でゴメン。伝言預かっているから」
彼女はそう言って、テーブルに置いてあったメモを手に取り戸惑いながら読み始めた。
「俺は結婚することになった。だからこれ以上待たないでくれ」
と――。
彼女は私が恋に落ちたことを知らない。だからあれこれ聞いてきた。
適当にはぐらかし続けるしか私には手がない。
それでも何とかやり過ごした。
彼女の帰った後、喫茶店のトイレに駆け込んだ。
我慢していた分涙が堰を切ったように溢れ出そうとしていたからだった。
電話で『結婚出来る日が来るまで待っていてくれ』と言ってくれた人。
あれは嘘だったのか?
それは再会を信じて待ち続けていた私への痛手となっていく。
私はそれから胃痛を繰返した。
それは未だに治っていない。
もう何年も経っていると言うのに……
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