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目の前を栗色のポニーテールが通り過ぎていった。オレに一声もかけることなく。本日これで、えっと……何度目だ? オレはやつが出て行った扉を見つめると、低く唸る。
おかしい。絶対なにかがおかしい——。
ポニーテールの持ち主である桜絵みくとは、幼稚園の頃からの幼馴染みで、いわゆる腐れ縁というやつだ。
極めて騒がしく、猪突猛進で、まわりを巻き込んで嵐を巻き起こす。オレのことも決して放っておいてくれない。そんな非常にはた迷惑な性格をしている。
その桜絵が、今日はまだ一度も話しかけてこない。そろそろ昼休憩になろうとしているのに、だ。
これはもう絶対なにかあるに違いない。考えながら、オレの頭の中にひとつの可能性が浮かぶ。それは、桜絵みくにまつわる大きな《秘密》についてだった。
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