Re:ロード

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「おにーさん、だーれ?」  ベッドから身を起こした彼女が、僕にその無邪気な顔を向ける。僕はまず回答を考え、それからできるだけ優しい声を準備し、そして口を開く。 「おはなしやさん、かな」 「なにそれー?」  そうは言いつつもあからさまにわくわくした表情に変わる彼女がいちいちいじらしくて、僕もつい頬が緩む。  付き添っていたナースに一言断って、席を外してもらう。ここからは僕と彼女のふたりだけの時間だ。 「なにおはなししてくれるのー?」  ベッドの脇に丸椅子を置いて腰かけた僕に食いつくように身を乗り出す彼女を、肩を押さえて寝かせる。体内に繋がっているのであろうチューブが取れたら大変だ。寝たままでいいからねと数回その髪を撫でてやると、彼女はくすぐったそうに微笑んだ。 「そうだなぁ……じゃあ」  考えるフリをしてみせたが、今日彼女に話すことは決まっている。  さあ、物語を始めよう。彼女のために。
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