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 月は沈んだ。時は満ちた。  刻限は過ぎ、そこは誰も彼もがいなくなった。  運命を指し示す針は頂点をまわり、生命の海は大いなる恐怖に飲み干された。  祈りは無慈悲に踏みにじられ、願いは地に堕ちた。  絶望が我が物顔で闊歩し、苦痛が唯一の友となった。  誰かが唱えた。 「神は死んだ。神は死んだままだ。そしてわたしたちが神を殺したのだ」  その言葉に頷く者はいなかった。しかし、全ての者がそれに同意していた。  人よ、足掻け、足掻け、足掻け。あの恐ろしい魔の手から逃れるために。
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