【神とヒト】

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 外に出た僕は、目を閉じて深呼吸する。火山灰の入り混じった匂いがした。ポケットから マスク ― 仮面 を取り出して装着する。  テンの元へ急がなくてはならない。あの場所は危険だから。  顔を上げて目を見開くと、ふわりと身体が浮き上がり空高く舞い上がる。そのまま風に乗り、国会議事堂へ向かって飛ぶ。  雲を切り裂くように飛びながら、テンの手紙を思い起こす。  仁へ  短い間でしたがありがとうございます。  記憶を取り戻すことが出来ました。  私は、やるべきことを果たしに行きます。  信じられないかも知れませんが、  私は、滅び行く世界の運命を変えるため、未来から来ました。    あなたが私を彼女だと言ってくれたこと、一生忘れません。  天下(てんか) 実子(みのこ)  歴史を変えるために未来から来た。そんなこと信じがたい。それは、ヒトが時間を超える術を得るということに他ならない。  『戦争反対』  『争いの先に豊かな世界はない』  『子供達に豊かな未来を』  『神様、お願い』  国会議事堂前の周辺には、深夜にも関わらずたくさんの人がプラカードを掲げている。テンの行動に触発されたのだろう。  それが、ヒトの神通力 ― インターネット にて世界へ広がり、各地で同調するデモが起きている。  上空には、漆黒の雲が集まっている。それは、(イカヅチ)を放つ時を待っているように見える。  
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