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すると、いきなり住職は大学教授の首を絞めだした。
「なに他人事みたいに言ってるんだぁ!」
「うわっ! なにをする!」
「それじゃ、お前が余計な真似をしなきゃ、こんなことにならんかったんじゃないか!おかげで寺は無茶苦茶! ご本尊もこんなじゃ信者は逃げてしまう! どうしてくれる!」
「そ、そんなの知らん! うわっ!」
「屋根の雨漏りなおしたところなんだぞ! 金がないんだ!」
「税金を免除してもらってるだろうが!」
「やかましい! 全部お前のせいだ! 弁償しろ!」
「研究費を削られて、こっちも金なんかない!」
「なにを……。あ! ああああああ!」
とうとう、住職は絶望のあまり頭を抱えてうずくまってしまった。
なんと、福助みたいに頭が肥大した地蔵がパンチパーマになっている。
緑の若葉が芽吹きだしたのだ。
驚異的な成長の早さだ。一週間後には巨木になってしまうだろう。
しかも動く――
このままじゃなにが起きるかわからない。
だが、大学教授は助手たちに「逃げるぞ! 逃げて知らんぷりするんだ!」と、無責任なことを命じだした。
あまりに非常識な命令に、大学院生たちは反応できずにあんぐりと口を開けているだけだ。
教授は大学院生の反応に焦れて、「なにをグズグズしてるんだ! 母校を潰す気か!」と、叱りだす始末、醜い大人の戦いを眺めながら、ゴンタロウは「わかりません」と、つぶやいた。
「宇宙植物が見つかったんですよ、歴史的な大発見なのに! なぜお金の心配ばかりしてるんですか?」
景子は、「うるさい、電化製品、うちらもずらかるよ、今度はこっちに弁償しろと言い出しかねない」と、景子はゴンタロウの腕をひっぱりだした。
「そ、そんな、住職を助けてあげないと、あんまりかわいそうです!」
それに景子は「だって、それが人生だもん」と、誤魔化したが、ゴンタロウは納得しなかった。
「ダメです、あなたなら助けられるでしょう」
それを聞いて、景子は露骨に舌打ちをした。
「くっそ、また余計に老けちゃう!」
時間が巻き戻った。
*
時間が巻き戻った日の朝、住職は頭を抱えることになる。
早朝、窃盗団が寺に潜入して本尊の地蔵菩薩が盗まれたのだ。
だが、心配無用で保険金がガッポリ入り、住職は二代目の地蔵を仏師に注文して、寺は潰れるのを免れた。
恵介が所属する特殊工作隊の活躍で、自衛隊の基地に運ばれた地蔵は今も倉庫で大人しく檻の中に入っている。
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