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バレていたのかと恥ずかしくて、目の前の三面鏡を閉じると彼の顔も消える。
背後にいるのに、それだけで少し不安になる私は、いつまで彼がいないとダメなのかと焦りを覚えた。
こんなんで、どうやってこれを外す決意なんてできるのか。
恐々伸びた右手の指先が自然と指輪を手繰り寄せ、くりくりと回して存在確認をした。
「別に……」
「……あ、そ」
そう言って私からパッと離れる功太は、はっきりしている。
なら、俺は要なしだなと分かった風に、さっさと切り替えて離れていく。
――行かないで。
そんなことが言えたら、私は私じゃない。
でも功太相手にいつまでこんな自分でいるんだろうと思うと、惨めで悔しくて苦しくて。唇を噛んでしまう。
でも――
「あのさぁ。もちっと、楽に生きろって」
「え……?」
立ち去ったと思った彼は、正面より少し右手に屈みこんで私を覗き込んでいた。
覗き込むその顔は、昔の面影と重なるのに少し皺が多くなっている。
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