それが雹でも霰でも

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 分かっているけれど、なんとなくおっちゃんがいるような気がして、一声かけてから軒下に入った。    久しぶりに店の前に立っていると不思議な感じがする。  チラリと店の中をうかがったけれど、さすがに本棚だけが取り残されていて中には何もない。  中学卒業後、だんだんと足を運ばなくなってきて、気がつけば年に数回レベルの訪問だったけれどおっちゃんはいつも笑顔で出迎えてくれた。  なぜか著名な漫画家と知り合いのおっちゃんは、自慢げに色紙を見せてくれて、そしていつでも栄養ドリンクをくれた。  そう言えば、なんで女子中学、高校生に栄養ドリンクくれてたんだろう?  不思議な思い出までひっついてきて、なんだか1人でおかしくなった。  ふふ、  笑いながら目を上げるけれど、やっぱり目の前は白い小さな玉が路面に跳ねて散らばっていて、相変わらず雹が降っている。  こんな経験、人生で早々ないんじゃないかと思いながら、ふうと息を吐いた。  やっぱりツイてない。  そう思っていたら、突然横から声がかかった。  「隣、良いですか!?」  「へ!? ……あ、ええ。ど、どうぞっ」
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