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いきなり声がかかるだなんて考えてもなかったから、突然声が降ってきてビックリした。
ちらりと隣を見やると、明らかにサラリーマンですって物語っているスーツ姿の男性が立っていた。
身長はいいとこ170センチだろうか。
短髪に刈り上げていて、スポーツでもしてた人かな?って印象の。
カバンだけはちょっとカラフルなタグで有名な、高級なものだ。
ちらちらと見ていたら、突然めがねを外して振り回しはじめたので、思わず凝視してしまう。
この人、大丈夫……?
「やっぱ無理か」
振った後、そのまま眼鏡をかけた彼は、やっぱ無理かと言って微妙な顔をする。
それを見てようやく合点のいった私は、慌ててごそごそとカバンを漁り始めた。
「これ、良かったら」
「いや、でも――」
「困りますよね、それじゃ」
思わず残念すぎるその眼鏡を見て言うと、逡巡して後、ありがとうと一言断って彼はハンカチを受け取ってくれた。
無言でキュキュと眼鏡を拭く間も、沈黙が続く。
でも、その沈黙を割くように雹も降ってくるけれど。
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