それが雹でも霰でも

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 近くもないけど、遠くもない。  初対面で、名前も知らなくて。  でも私たちは今、同じ場所でひととき避難して、同じことで笑っている。  なんだか不思議だ。  「申し遅れました。こういう者です」  突然差し出されたのは1枚の名刺。  名前は、雲井渉(くもいわたる)。  出版社にお勤めらしい……え、めっちゃ大変そうな仕事。  なんて思いながら、受け取っただけではいけないと思いつつも、名刺を持ち合わせていない自分に慌てた。    「ご、ごめんなさいっ。私ちょうど切らせてて」  「いや、そんな全然。もう少し貴方の横にお邪魔することになりそうだったので、こう、変な奴じゃないですーってカード出したかっただけで」  「カードって」  言い方がおかしくて思わず笑うと、つられて雲井さんも笑ってくれた。  うん、多分悪い人じゃない。  「コレ、いつ終わりますかね?」  「ね……あ、そうだ。調べてみます」  今更に気がついてスマホを取り出すと、いいですよ別に、と止められた。    「分かったところで、目で判断するしかないですし」  
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