123人が本棚に入れています
本棚に追加
言われてみて、同じように目の前に視線を向けるとまだまだ跳ねる白い粒。
ところどころ跳ねて足に当ってくるのを小さく避けている状況が、まだ続いている。
こんな攻防を1人で続けていたら、本当に最悪の一日に違いなかった。
でも今は、雲井さんがほんの少しだけ私の気持ちを軽くさせてくれている。
「すみません。俺なんかが横に来たばかりに、落ち着かないですよね」
本気で申し訳なさそうな顔してそういうので、小さく両手を振ってそんなことないですよと伝えた。
むしろ心中では真逆のコトを考えていたくらいだ。
なんとなく話題を変えたくなって、強引に質問をしてみた。
彼が来る直前まで思い出していた、この店のことを……
「このお店、ご存じですか?」
「え? あぁ、はい俺も結構利用してたので知ってます」
今は閉店してがらんどうの店内を指さしながら尋ねると、意外にも知っていると返事が来てにわかに嬉しくなった。
予想外の返答に、思わずテンションも上がる。
まさかこんな古めかしい古本屋を知っている人がいて、ましてや利用していただなんて嬉しすぎる。
これまで同級生にも幾度か紹介したけれど、こんな古書店に通う女友達は全くいなかった。
もちろん男友達も。
それが今になって出会えた小さな奇跡に、なんだかほっこりとする。
「嬉しいです。良かったぁ」
最初のコメントを投稿しよう!