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もういくつだと思ってるの? って言いたいのに、いくつになっても引き寄せてくれる手が嬉しくて、じわりと瞼の裏が熱を持つ。
まつ毛の縁が濡れて、瞬きをしたら落としてしまいそうな雫を、懸命に零れないように耐えた。
「来いよ」
やっぱりそう言って引き寄せてくれた。
怖がる私を無視して、功太が正面から抱きしめてくれる。
もうそんな年じゃないのに、とか。
こんなとこでなにやってるんだろう、とか。
いっぱいの傍観者の私が囁くのに、背に回された手がポンポンと叩いて宥めてくれるから、見えないたくさんの傍観者がすぐに消えてなくなる。
功太の手は、いつも魔法みたいに私を温かくする。
この手も、私は愛しい。
愛しくて、好きで、ずっと離したくない――
「功太」
「なんだよ」
「ずっと、一緒にいてもいい?」
スンと思わず啜る鼻水。
それを分かってか、彼がふはっ、と笑う。
それから――今更だなって言いながら、私を力いっぱい抱きしめてくれる。
それだけで、鏡に映った真実の私なんていなくなってしまった。
「ばーか。死んでもずっといるんだよ。俺と」
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