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ひんやりと感情のないそのつるりとした表面は、話すわけでもないくせに、雄弁にたくさんのことを語りかけてくる。
時としてそれは残酷で、人に真実を突き付けるのに最も適した手段に思えた。
今の、私みたいに――
「はぁ……」
嘘偽りを受け入れてくれない、真実を目の前の人にリアルタイムでお届けしてくれる鏡は、今日も絶好調にそのままの私をさらけ出してくれる。
今更とは分かっていて、それでも抗いたいのが本能。
つまりは……今になって、毎日顔を突き合わせることになった彼に、年老いたところを見せ続けることに躊躇している。
これまでの20年と少しの間は、年に数回の逢瀬だったから乗り切れた。
会いたいのを誤魔化して、たまにでいいと嘯いて。そのくせ会える日は、前日どころか1週間も前から念入りに手入れをしていた。
エステに行って磨くなんて当然のこと。
お金をかけたいことなんて何もないから、自分に磨きをかける以外のことなんて何もなかった。
もう次はないのかもしれない。
これで最後にしようって言われるのかもしれない。
会えるたびに喜んで、別れるたびに最後だと思って泣いた。
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