嘘も真実も(全てを捨ててその後)

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 何もかも捨てたけれど、唯一捨てられたくないと縋りたかったのは彼一人だけ。  でもその彼にすら、ずっと縋っていたい自分をさらけ出すことなんてできなくて、嘘で言葉を塗り固めた。  いつか、気づくかもしれない……私なんかの絆創膏でいるよりも、きれいな元嫁の良さに。    一度だけ支社に来ていた、人を見た。  噂になるだけあって、本当に綺麗で佇まいの美しい人だった。  根っからのお嬢様って感じの、俄かでは手に入らない上品さ。  伸びた背筋も、整えられた長い髪も、まるで私とは正反対。  功太は……魔が差して私の手を取ってしまったんじゃないかって、今でもまだ思う。  俯むいた先、左手で鈍く存在感を放つソレを私の目が捉えて離さない。  これに縋っているくせに、いつでも外す覚悟をどこかでひっそりとしている自分が情けない。
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