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死んでも外さないなんて恥ずかしいことを言ったくせに、20年以上経ってもまだ後悔を抱えているのがいい証拠。
きっと私はこの後悔も、墓場まで持って行くのだろう。墓場があるのかすらあやしいけれど。
鏡を見つめる度、いつも私は問いかけられている気がして呼吸ができなくなる。まるで瞬時に真空に閉じ込められたように。
――お前なんかで、いいと思っているのか?
問いかけが何度も押し寄せてきて、鏡を見る度に胸が痛い。
「おい」
呼ばれて振り向くより先。
ドスンと音を立てて後ろに座った彼にすっぽりと囲われて、私の背は功太の胸にポスッと収まった。
トクトクとゆったり響く心音は、彼そのものの柔らかな揺らぎと同じで、私を簡単に安らぎに誘ってくれる。
胸の痛みが、一瞬消えた。
「何?」
安らぎと同じくらいドキドキして、還暦を迎えたのにバカみたいと思うのにバカにできない自分が、嫌なのに嫌じゃない。
相反する気持ちを抱えて鏡越しに映る彼を見つめると、にぃっと悪役顔負けの笑みを返されて私の唇は小さく尖った。
「何ってこっちのセリフ」
「どういうこと?」
「毎度、なんで鏡見てため息ついてんだよ」
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