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俺は手元の鍵を交番に届けるべく、大通りを歩いていた。
──そういえば、この辺で俺は財布をスられたんだよなぁ……。
交番は俺が財布をスられた場所であり、石っころ長者をすることを決めた場所から五分ほどの場所にある。
結局、石っころ長者は警察に行くことで終わりを迎えようとしていた。
そして、きっと俺は『坂東(略)』を観れないのだろう……。
そんな絶望感を抱きながら歩いていたその時だった。
「いてっ!」
「うぉっ!?」
俺は、大きな何かに躓いた。
「いてぇな!」
文句を言うそれに目をやると、それは物ではなく、這いつくばっている人だった。
「あ、すんません……」
「ったく、人が探しもんしてるって時によぉ……」
その言葉に、俺のお人好しセンサーが反応した。
「何を探してるんです?」
そう訊ねると、その男は「あんたには関係ねぇよ」と蝿を追い払うように手を振った。
「でも、二人で探した方が早いですから……」
「いいっつってんだよ」
「でも、二人でプリ○ュア……」
「お前、何言ってんだよ?」
それは、俺にも分からなかった。
「……鍵」
そんな俺に心を開いてくれたのか、はたまた変人だから怒らせたらヤバイとでも思われたのか、男は静かに言った。
「バイクの鍵。探してんだよ」
「バイクの……鍵……?」
俺は手元の鍵を見た。
もしかして……。
「あの……」
「んぁ? 探すなら、さっさと探してくれよ」
「もしかして、これじゃないですか?」
俺が鍵を差し出すと、男の両目が見開いた。
「おま、これどこで!?」
「あ、何か河原に落ちてたみたいです……」
「いや、助かったぜ! あ、何か礼しねぇとな……」
そう言って男は持っていたボディバックの中を見始めた。
「いや、お礼なんて……」
「お、丁度いいのあったわ!」
男は俺の言葉を掻き消すようにそう言うなり、俺に何かを差し出してきた。
「これ、やるよ! 多分金入ってるぜ!」
それは、まさかの財布だった。
──しかも、見覚えのある。
「これ……」
「ん?」
見間違うはずもない。
──これ、俺の財布!!
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