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──コロシアム、控え室。
「フン、来夢達の餌食になる運の悪いカップルはどいつらだ?」
「来夢ちゃん来夢ちゃん!終わったらた〜っぷりご・褒・美♡頂戴ね〜?♡」
「ぁあ、勿論だよ美弥…♡」
「…。」
…この2人は何時もこうなんだな…そんなに楽しいのかな…?
「ん?何だお前は?」
来夢さんがわたしの視線に気付いた。…わたし達の体操服を見て納得する。
「ぁあ、お前達か。来夢達の餌食になる不幸なバカップルは。」
…バカップルって、この人に言われたくないんですけど…!?
「…。」
来夢さんの言葉に沈黙で返す笑。“バカップル”と言う言葉を悪口と取るか褒め言葉と取るかで悩んでるんだろう。大体分かるようになった。
「後輩ちゃん達、よっろしっくね〜♡
美弥はね、美弥って言うんだよ〜♡
思う存分打って、蹴って罵って〜挙句の果てに放置して〜♡♡」
「や、辞めないか美弥…っ」
…この2人はこの10日間ずっとそうなのだろうか?…うわー、何それ超疲れそう…。
…何かちょっとだるいなーって思いながらコロシアムに入場。
…だって負けそうな戦いって何か嫌じゃない。
『1年生の皆さん、親睦会は楽しんでいますか〜?
バトルの実況・解説は高山がお送りしています!一緒にパーティーを盛り上げて行きましょう〜っ♪』
…テンション高い先生だなぁ。保健体育の先生だからかな?
『さぁさぁ!今回の対決も面白いことになりそうだ〜!?』
ん?
『片やライムミヤコンビ、親密度5500!』
2ヶ月で200も増えてる…!?…て言うかこの先生ネーミングセンス無いっ!
『片やエミエミコンビ〜、その親密度、何と4500!!』
4500!?こっちは2ヶ月で1200も上がってるじゃん!?…あ、でもこれならちょっとは勝てそうかな…?
「フン、なかなかやるじゃないか。…お前達も幼馴染みか何かか?」
…も、ってことはこの2人幼馴染みなんだ。…え〜?ずっと昔からこうなの…?
「何だその、ドン引きするような目は。」
あ、バレた。
「たまんないよぉ〜♡♡
もっとドン引いて!その視線でぐさっと美弥を射抜いて!!」
…うわぁ〜。
「だから美弥、後輩の前ではもうちょっと我慢してくれないかっっ」
「はぁはぁ…っ♡♡」
…うわぁ〜…。
「絵美さん、そろそろ始まる筈ですが、お加減でも優れないので?」
「…ん〜、そう言う訳じゃないんだけど、何か気乗りしないなーって。」
…何と言うか、1年間掃除されてないプールを泳がされる気分?
「成程。そう言う時は私がぱーっと綺麗さっぱり片付けてしまうとしましょう。」
「…うんお願い…♪」
「言ったな!?」
おや聞こえてたか。
「来夢と美弥の絆を舐めるなよっ!!」
「ご褒美の為に頑張りまーす!!」
あ、ご褒美あるんだ、それ良いな〜…って良くないわ!!…ほんと何か嫌だこのコンビ…。
「いつでも来い。来夢と美弥は絶対に負けたりしないからなっっ」
「信頼が重い〜♡でも、ス・テ・キ♡♡」
…何だこの2人。いや、輪をかけて変なのは美弥さんだけなんだろうけど。
『いつでもは駄目ですよ〜、ちゃんとブザーを待って下さいね☆
では、レディー……ゴー!』
テ・テ・テ・テーーーン!!
「ふはははははーー」
手回しガトリングでライムミヤコンビを攻撃する笑。
「くっ!何だこの武器は!?反則じゃないのかっ!?」
『あーそれ良く言われるんですけど反則じゃ〜ないみたいなんですよ〜』
右に同じでーす。
「くっ!…てぇい!美弥の為…美弥の為!」
来夢さんが剣を振って弾丸を弾き始めた。…と言っても弾けてるのは全体の1/3くらいだけど。
「おや。弾道が読まれてしまいましたか。流石は上級生ですね。戦い慣れていらっしゃる♪」
「ぐ…美弥!?」
ガトリング砲が美弥さんの方を向く。
「きゃぅうううううん♡♡♡♡」
ダダダダダっと弾丸が美弥さんを狙い撃つ。…美弥さんは何故だか嬉しそうに悲鳴を上げている…まさか。
「美弥!?避けるんだ!そんなに食らってしまったらHPが…!!」
「だっで〜気゛持゛ぢ良ぐでやめられないんだも〜〜ん゛っ♡♡♡」
いや、マッサージチェアじゃないんだから…。
「くっ…かくなる上は!ごめん美弥!」
「えっ!?」
来夢さんが美弥さんを突き飛ばし、剣で弾を受ける。
「美弥は来夢が守るっ!!」
「来夢…ちゃん…」
──あれ?これわたし達が悪役みたくない…?
「くっ…ぅううう…
美弥の為…美弥の為…!!」
「…。」
剣に弾丸が当たる度に大きく震える腕を、美弥さんの為と言い聞かせて堪える来夢さん…。…来夢さん、そこまで美弥さんのことが…。
「来夢ちゃん……」
その姿を見て、何かを決したかのような顔でこちらを見る美弥さん。
「…来夢ちゃんごめんっっ
美弥も、来夢ちゃんの為に頑張るから!
…やーーっ!!!」
言って、棘の付いたハンマーのような武器を振り上げてこっちに走って来る…!!
「──絵美さんっ!!」
ガトリング砲を瞬時に鎌に変え、わたしの前に立ちはだかる笑…。
「笑…っ!」
「せぇええーーいっ!!!」
「やーーーっ!!!」
笑と美弥さんの武器がぶつかり合い…笑の大鎌が美弥さんの体を大きく斬り裂いた…。
「あ…れ……ごめん…ね…来夢、ちゃん…」
HPがゼロになり、か細い声で美弥さんがそう言い、地面に倒れた…。
「美弥っ!!」
わたし「美弥さんっ!!」
『だ、大丈夫ですよ〜!!この会場には保健室も用意されてますから!そこで鎮痛剤を貰って下さ〜い!!』
そっか、治るんだ…良かった…♪
「…ねぇ、わたし達も保健室行かない?」
「お見舞い、ですか?」
「…うん。」
来夢さん「何をしに来た。」
コロシアム、第1保健室にて、ベッドに横たわる美弥さんを庇うように立ち、鬼のような形相で睨んで来る来夢さん…。
「え、えっと〜…」
「絵美さんは美弥先輩のお見舞いに来ただけです。それ以上でも、以下でもありません。」
「…そうか、お前は戦ってすらいなかったものな。」
うぐっっ。
「…まぁ良い。逃げられるよりは面倒が無くて良いからな。」
…逃げる?
「おいお前達、来夢達とバトルも含めた5競技で勝負しろ。」
「きゃう〜ん!!」
ぴーん!!と、それまで寝ていた美弥さんがベッドの上に立ち上がった。
「何それ物凄く辛そう!楽しそう〜!!♪
終わったら5回分のご褒美、お仕置きくれるよね!?よね!?」
「み、美弥…高が電気ショックとは言えいくら何でも5回は体に悪いぞ……」
「う〜〜」
不満そうにごねる美弥さん。
「ど・う・し・て・も・駄・目?♡」
「うっ…美弥……」
美弥さんの可愛い笑顔に悩まされているらしい来夢さん…
「…分かった。
1競技につき1回、ご褒美/お仕置きタイムを設けることにするっっ」
折れちゃうの!?!?
「きゃう〜〜んっ♡来夢ちゃん大好きっ♡」
「えへへ……じゃない美弥っ
良いか美弥、お仕置きで痛くするとお仕置きにならないから、お仕置きの場合は弱くするっ!」
ご褒美の方を痛くしちゃうんだっ!?!?
「きゃう〜〜〜んっ!!それ良い!絶対良い!!美弥絶対頑張るわ〜ん!!」
「期せずして忠犬コンビが爆誕してしまいましたね…。」
ぼそっと耳打ちして来る笑。
「そんなこと言ってる場合じゃないよ!どうしよう、笑!?」
「フン、どうしようも何もあるか。」
「来夢さん!?」
「…フン、お前達は知らないだろうが、元々“親睦会”のパーティーはこんな風に各種競技で競い合い、親密度の向上を図るものだからな。
最低でも5戦はしないと終わらせて貰えないんだぞ?」
わたし「え〜!?」
「えーじゃにゃい!!…えーじゃない!!」
美弥さん「ふ、ふふふ…♡あと5回もご褒美…ふふっ…♡」
わたし「…。」
もうやだよ親睦会…。あと8日とか絶対無理だって…!!
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