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ちゅっと音を立てて離れる。
「今度間違えたら、お仕置きだからな?」
「おしおき……」
「ああ。明日の朝に文句を言うなよ?」
俺が言わんとしている“お仕置き”がどんなものか悟った雪華は、顔を赤くする。
「ま…間違えない、から……」
「そうか?」
「……頑張る」
自信なさそうに呟いた彼女に、くくっと笑いが漏れる。「間違えてくれてもいいぞ」と言いながら頭をポンと軽く撫でると、「絶対間違えない」と意気込まれた。
こんな些細な遣り取りが楽しい。雪華といると飽きることがない。
「でも、これでも控えめにしているつもりだ」
唐突にそう言った俺に、彼女は「何のこと?」という顔で首を傾げる。
(そういうところが逐一可愛いのだが――)
分かってないのだろうな、と思う。
(それならそれで、ゆっくり分からせていくだけだな)
背中と腰に回した腕にぐっと力を込め、彼女の耳元で低く告げる。
「俺は雪華をもっと甘やかしたい」
「えっ!も、もっと…!?」
「ああ。だって―――」
(そろそろ我慢も限界か――)
ゆっくりとソファーの上に押し倒す。
彼女の背が座面に着き、そこからサラリと髪が垂れ下がる。
目を丸くしている雪華の顔にゆっくりと顔を寄せ、唇が重なり合うその直前。
「妻を可愛がるのは夫の役目だろう」
彼女が目を見開く。それと同時に、噛みつくようにその唇を奪った。
【了】
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