第二章 『はじめまして』をもう一度

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高校の時からまどかは何度もうちに遊びに来ている。 そのころまだ生きていた母とも時々会っていて、会うたびに私のことで二人して盛り上がっていた。 そんな彼女が言う台詞は多分正しい。 きっと今の私を見たら母はこう言うだろう。 『仕事ばっかりしてないで、ちょっとは女の子の自分を楽しみなさい!』 母は何より、私が女として幸せになることを願っていた。 マグカップを置いたまま黙ってしまった私に、まどかは言いすぎた、と思ったのだろう。 「ご、ごめんね、ゆっかちゃん。お節介だと自分でも思うんだけど、ゆっかちゃんのことが心配で……」 焦った声に顔を上げると、ただでさえ垂れ目の瞳を更に下げて、申し訳なさそうにしているまどかと目が合った。 「うん、分かってる……ありがとね、まどか」 今日みたいに私のことを親身になって心配してくれるのは、高校生の時仲良くなってからずっと。 彼女は私が一番辛かったときに寄り添ってくれた人のひとり。血の繋がった肉親がいない私にとってかけがえのない人だ。 丸い瞳をうるっとさせたまどかは、しめっぽくなった空気を変えるようにワントーン高い声を上げた。 「っていうか、こんな綺麗なゆっかちゃんをほっとくなんて、周りの男どもは何を見てるの!?」 「いや、別に綺麗じゃないし。もしそう見えるとしても見かけだけよ…今の私はただの“ハリボテ”」 肩を竦めてそう言うと、まどかが眉をひそめる。 「ゆっかちゃん…まだあんな男の言ったこと気にしてるの?」 「そんなわけじゃないんだけど……」 「あんな(やつ)の言ったこと何て気にすることないって言ったでしょ!」 「まどか…」 「ゆっかちゃんのことを綺麗と言わずして誰のことを言うのよ!」 その勢いに少し慄く。
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