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高校の時からまどかは何度もうちに遊びに来ている。
そのころまだ生きていた母とも時々会っていて、会うたびに私のことで二人して盛り上がっていた。
そんな彼女が言う台詞は多分正しい。
きっと今の私を見たら母はこう言うだろう。
『仕事ばっかりしてないで、ちょっとは女の子の自分を楽しみなさい!』
母は何より、私が女として幸せになることを願っていた。
マグカップを置いたまま黙ってしまった私に、まどかは言いすぎた、と思ったのだろう。
「ご、ごめんね、ゆっかちゃん。お節介だと自分でも思うんだけど、ゆっかちゃんのことが心配で……」
焦った声に顔を上げると、ただでさえ垂れ目の瞳を更に下げて、申し訳なさそうにしているまどかと目が合った。
「うん、分かってる……ありがとね、まどか」
今日みたいに私のことを親身になって心配してくれるのは、高校生の時仲良くなってからずっと。
彼女は私が一番辛かったときに寄り添ってくれた人のひとり。血の繋がった肉親がいない私にとってかけがえのない人だ。
丸い瞳をうるっとさせたまどかは、しめっぽくなった空気を変えるようにワントーン高い声を上げた。
「っていうか、こんな綺麗なゆっかちゃんをほっとくなんて、周りの男どもは何を見てるの!?」
「いや、別に綺麗じゃないし。もしそう見えるとしても見かけだけよ…今の私はただの“ハリボテ”」
肩を竦めてそう言うと、まどかが眉をひそめる。
「ゆっかちゃん…まだあんな男の言ったこと気にしてるの?」
「そんなわけじゃないんだけど……」
「あんな男の言ったこと何て気にすることないって言ったでしょ!」
「まどか…」
「ゆっかちゃんのことを綺麗と言わずして誰のことを言うのよ!」
その勢いに少し慄く。
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