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「そもそも彼には恋人くらいいるでしょ?イケメンエリート様だもの。それに向こうからも『君に興味はない』ってハッキリ言われたし」
私が話している間中、目の前で聞いているまどかの顔から、不満がありありと伝わってくる。
「でも恋人がいたら“お見合い”には来ないんじゃないの?」
「ああ。彼も知らなかったんだって、呼ばれたのが“お見合い”の席だって。私とおんなじ」
サラリと言い放った私に、まどかは深い溜息をついた。
「……分かった。でも、何かあったらいつでも相談にのるからね。ちゃんと言ってよ?」
「うん、もちろん。そのときは一番にまどかに言うから」
「約束よ?守ると誓いますか?」
「はい、誓います」
まるで結婚式の誓いの言葉のように真面目に答える。
三秒ほど真剣な瞳を交し合ったあと、同時に「ぷっ」と吹き出した。
「心配してくれてありがと、まどか。話しを聞いてもらってずいぶん落ち着いたわ。明日からは平常心で仕事にまい進できそうよ」
にっこり微笑んだ私に、まどかは微妙な顔を浮かべた。
それからもまどかとのお喋りは尽きることなく、彼女の愛息である瑛太くんの話や佐知子さん夫婦の話、話題の映画の話など、話題があちこちに飛びつつも盛り上がり、あっという間に時間は過ぎていった。
そうして夕方くらいに、瑛太くんを連れて車で迎えにきた結城君と一緒に、まどかは帰って行った。
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