第二章 『はじめまして』をもう一度

17/17
前へ
/359ページ
次へ
「そもそも彼には恋人くらいいるでしょ?イケメンエリート様だもの。それに向こうからも『君に興味はない』ってハッキリ言われたし」 私が話している間中、目の前で聞いているまどかの顔から、不満がありありと伝わってくる。 「でも恋人がいたら“お見合い”には来ないんじゃないの?」 「ああ。彼も知らなかったんだって、呼ばれたのが“お見合い”の席だって。私とおんなじ」 サラリと言い放った私に、まどかは深い溜息をついた。 「……分かった。でも、何かあったらいつでも相談にのるからね。ちゃんと言ってよ?」 「うん、もちろん。そのときは一番にまどかに言うから」 「約束よ?守ると誓いますか?」 「はい、誓います」 まるで結婚式の誓いの言葉のように真面目に答える。 三秒ほど真剣な瞳を交し合ったあと、同時に「ぷっ」と吹き出した。 「心配してくれてありがと、まどか。話しを聞いてもらってずいぶん落ち着いたわ。明日からは平常心で仕事にまい進できそうよ」 にっこり微笑んだ私に、まどかは微妙な顔を浮かべた。 それからもまどかとのお喋りは尽きることなく、彼女の愛息である瑛太くんの話や佐知子さん夫婦の話、話題の映画の話など、話題があちこちに飛びつつも盛り上がり、あっという間に時間は過ぎていった。 そうして夕方くらいに、瑛太くんを連れて車で迎えにきた結城君と一緒に、まどかは帰って行った。
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

18196人が本棚に入れています
本棚に追加